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独り言


とりとめのないつぶやき
by pooch_ai
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厳寒に咲く花

~ドラマ「冬のサクラ」を観て、冬の桜を見に~
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 日曜の夜、新しく始まったテレビドラマ「冬のサクラ」を観た。1週間ほど前から盛んに予告編が流れていたし、その日の朝刊にも、全面広告が載っていて、興味を惹かれたのだった。




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 病気の母親の世話をしながら、黙々と仕事に打ち込んできた、36歳になるガラス職人の男性が、冬に咲く「啓翁桜」を観に、雪の山形へやって来た女性と出会うのだが、彼女は、事故に遭い、全ての記憶を失くしていた。と、いうところから、話はスタートしたのだが、記憶喪失で、思い浮かんだのが、山本周五郎の「その木戸を通って」である。 未だ中学生だった頃、何気なく、兄の本棚から抜き出して読んだその小説が、山本周五郎の作品との初めての出会いだったのだが。






 ある夕暮れ、武家の庭に迷い込んで来た、若く美しい女性。彼女は、自分の名前も、どこから来たのかも思い出せず、途方にくれて佇んでいたのだった。
その家の女主人は、気の毒に思い、家に泊め置くのだが、素直で気立てがよく、喜んで家事の手伝いなどをするため、彼女をすっかり気に入ってしまい、やがて息子の嫁に迎え入れたのだった。
 2人の間には子どもも生まれ、仲睦まじく暮らしていたのだが、ある日突然、彼女は、姿を消してしまったのだった。

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 恐らく記憶が戻り、入ってきたときに通ったのと同じ「その木戸を通って」、また、出て行ってしまったのであろう。という短編小説なのだが、読み終わった後、はかなく、哀しいストーリーが、子どもの私の胸にも、深く沁み入り、言葉も出なかった。


 
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事故や強いショックで、記憶を失ってしまい、自分が誰なのか、これまで、どこで、どんな暮らしをしていたのかもわからない「記憶喪失症」は、考えただけで恐ろしかったけれど、同時に、謎のベールに包まれたような、不思議な魅力を感じたのも事実だった。







 しかも、再び、同じような事故に遭うとか、何かの弾みで記憶が蘇ると、今度は、記憶を失っていた間のことは、全て忘れてしまうというのが、なんともミステリアスな感じで、「その木戸を通って」という題名の妙と共に、忘れられない作品となったのだった。以来、山本周五郎の大ファンになり、次々に彼の作品を読み漁り、時代小説にのめりこんでいったのだった。


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 そんなことを想い返しながら、ドラマを観ていたら、急に、冬の桜が見たくなり、アンジェへ行ってみようと思ったのだった。まだ、花が咲いているとき、行き合わせたことはなかったけれど、あそこには、確か、十月桜の木が何本かあった筈、と思い出したので。
 家を出たときは、風が冷たかったけれど、アンジェに着いてみたら、風はなく、晴れていたので、日向は暖かく、歩き回るには丁度よかった。


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 彩りに欠ける厳寒のシーズンで、裸木に囲まれ、池の中に立つドームは、わびしげな感じがしたが、それでも、寒空の下、ビオラやストック、水仙などが咲いていたし、ロウバイのつぼみもほころびかけているのを目にしたときは、カチンカチンにかじかんでいた私の心や体が、柔らかく揉み解されていくような気がして、ウキウキしてきたのだった。


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 そして、お目当ての十月桜の木があるチェリーガーデンへ進んでいったところ、なんと、もう散りかけていて、ほんのわずかではあったいたものの、青空をバックに、枝にしがみつくようにして咲いている十月桜の花が認められたのだった。

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 それは、遠目には、花というよりも、細い枝にからみついた、ティッシュペーパーかなにかのようで、決して美しいとは言えず、むしろ哀れを誘う姿ではあったけれど、色彩の乏しい、華やかさに欠ける、この厳寒のシーズンに、懸命に花を開かせていた、そのことに胸を打たれたのだった。

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 ドラマの中でも、雪の中で咲く桜の木は、もう存在していなかったのだが、身元が判明して、家族の元に戻った彼女は、この先どうなるのか、ガラス職人の男性との関係は・・・、と、この先、どう展開していくのかが気になるところ。



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 今期スタートしたドラマは、最初から観る気になれなかったり、初回の15分ぐらいを観ただけで、チャンネルを変えてしまったり、と不作だが、映画「アマルフィー」の続編の「外交官黒田康作」と、「冬のサクラ」は、今後も観続けよう、などと、十月桜の花を仰ぎ見ながら思ったのだった。






 歩き疲れ、ひと休みしようと、自販機で買ったホット・ココアを手に、パラソル付きのテーブルに歩み寄ったら、鉄製の椅子に、クッションが取り付けられていたのには、感激した。冷え性の私は、駅のホームや公園のベンチに腰掛けると、冬は、お尻が冷たく感じられるので、マフラーを敷いたり、広告紙を持ち歩いていたので。


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 四季折々に、美しい花々が迎えてくれると同時に、そうした細やかなスタッフの心配りが、アンジェファンを増やしているのだと思い、年間パスポートを活用して、これからは、もっと頻繁に訪れることにしよう、と、改めて思ったのだった。



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by pooch_ai | 2011-01-21 15:47
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