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独り言


とりとめのないつぶやき
by pooch_ai
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● 凛とした佇まい


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  ~残雪の庭園に、梅ほころび始めて~






 映画「母べえ」を観て来た。
 山田洋次監督、吉永小百合主演のこの映画は、前評判が高く、ベルリン国際映画祭に出品、公式上映されているが、やはり感動した。




● 凛とした佇まい_c0019055_10591896.jpg  吉永小百合は、デビュー当時から、清純な美しさと、優れた演技力を兼ね備えた女優だと認めていたし、長年にわたり、平和への願いを込めて、原爆の詩の朗読を続けるなど、人間としての生き方にも感服してはいるものの、個性派好みの私としては、いかにも健気という感じで、優等生タイプの彼女は、なんとなく煙ったく、好きとは言い難かった。



 若い頃の彼女は、いわゆる文化人と呼ばれる作家や、大学教授などのオジ様族に絶大な人気があり、熱烈なファンである彼らが、「サユリスト」と称されていたことなども、彼女を敬遠したくなる要因であったかもしれない。



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 だが、この映画の彼女には、素直に、心からの拍手を送りたいと思った。




 治安維持法違反で検挙され、獄中にありながらも、あくまでも戦争反対の信念を曲げない“父べえ(とうべえ)”を尊敬し、二人の娘と共に、貧しくとも誇りを失わず、その帰りを待つ吉永小百合の “母べえ”は、常に、優しく、そして凛として美しく、彼女以外に、この役は考えられないと思った。


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 また、脇を固めている俳優陣が、それぞれにいい味を出していて、それが、この映画の完成度を高め、家族愛に満ちた素晴らしい作品に仕上げているのだと思った。




● 凛とした佇まい_c0019055_11142370.jpg 父べえ役の坂東三津五郎をはじめ、恩師が投獄されたと知って、駆けつけ、母娘を支え続ける、教え子の浅野忠信、義妹の檀れい、長女の志田未来や、笑福亭鶴瓶、左時枝、笹野高史、大滝秀治等々・・・。
 特に、老医師役である大滝秀治の「不合理なことに鈍感にならなければ生きてゆけない、イヤな時代になりましたね」とのセリフが印象的であった。



 山田洋次監督は、原作を読むとすぐに、吉永小百合に出演を依頼、快諾を得てから、「武士の一分」の撮影に入ったとのことだが、それだけ、彼にとって、思い入れの強い作品なのであろう。



 映画を観終わった後、余韻をかみしめながら、散歩がてら、足をのばして、「六義園」に立ち寄ってみることにした。
正門を入るとすぐ、しだれ桜のある広場の一角で、「冬ぼたん」が展示されていたが、ピンクや白、赤紫色の大輪の花が、はっとするほど、目に鮮やかであった。



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 庭園の内部に進んで行くにつれ、目の前に広がる日本画のような光景に、冬の庭園というのも、身の引き締まるようなしんとした感じで、いいものだなと思った。





● 凛とした佇まい_c0019055_11421777.jpg ところどころに、数日前に降った雪が残っていて、枯れ芝や雪釣りと相まって、一層、風情ある趣を醸し出していた。
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 柳沢吉保が築園した「六義園」は、和歌の趣味を基調としており、池をめぐる園路を歩きながら、移り変わる景色が楽しめる、繊細で温和な庭園とのことだが、池には、たくさんの水鳥の泳ぐ姿も見られ、ほっとするような心の安らぎを感じたのだった。


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 吹き上げ茶屋の庭で、松の木の下に、わらで編んだ梅の花のような物を見つけて、なんだろうと思いながら、カメラにおさめた。● 凛とした佇まい_c0019055_11493487.jpg
後で聞いたところ、干支の「ねずみ」で、単なる飾りとのことであった。「そう言われて見れば、ねずみに見えなくもないけれど・・・」と、失礼とは思いつつも笑ってしまった。● 凛とした佇まい_c0019055_11504242.jpg







 そして、さらに園路を辿って行ったその先で、寒風の中、紅白の梅のつぼみがほころび始めているのを目にしたときは、春の近づく足音が聞こえるような気がして、一寸、心が浮き立ったのだった。



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 青空に映える、白梅の花を見上げていたら、その凛とした美しさは、吉永小百合に重なるものがあるなと思ったのだった。






 ベルリン映画祭で、彼女は「2度とあのような時代には戻りたくない、との願いと祈りを込めて、この役を演じました」と、スピーチしていたが、その願いが届くように、一人でも多くの、世界の人々に、あの映画が観てもらえるといいのだが・・・。




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by pooch_ai | 2008-02-16 12:20
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