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独り言


とりとめのないつぶやき
by pooch_ai
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新聞小説にどっぷり



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    ~女蒔絵師に導かれて・・・~







 元来、ホワイト系の花が好きなせいか、ハナミズキの花を目にしたとたん、私は、吸い寄せられるように、木の側へ、近づいて行ったのだった。


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                          ↑ ハナミズキ

 秋には、いち早く紅葉し、同時に真っ赤な可愛い実をつけて、目を楽しませてくれたが、光まばゆいこの季節、純白の花は、新緑に映えて清々しく、ひと際美しかった。


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 シャッターを切るのも忘れて、花の下に佇み、しばし見とれていたら、今読んでいる朝刊の小説「華麗なる花実」の女主人公である理野さんのことを思い出した。彼女をこの庭に立たせたら、早速、下絵帖を取り出し、熱心に写し取ることであろうと。


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                         ↑ シャクナゲ
 新聞小説を読むのは、実に、何十年振りかのことだが、予告で、次回は「乙川優三郎の作品で、主人公が女蒔絵師」と知り、俄然、興味をそそられたのだった。




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 読み始めてみると、江戸琳派の絵師・酒井抱一や鈴木其一、蒔絵師の羊遊斎などが、実名で登場してくるうえ、仕事にのめりこんで、日々、模索し、苦しみながら、寝食も忘れて、創作に取り組んでいる理野さんという女性が、とても魅力的で、すっかり彼女の虜になってしまっている。






 たとえば、「筆をとり、試みに蔓草を描いてみると、今夜のうちにも何かが現われてくれそうな気がして、いつかしら創作の渦にのまれていった。やがて、意匠の閃きは予感の領域にくる・・・、

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 ← コデマリ



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                        ← プリムラ

     ↓ ユキヤナギ

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 創造の魔物に憑かれてしまうと、もう眠らなくてよかった・・・、描くそばから湧いてくる新鮮な構図に興奮しながら、彼女は予期しない至福の中にいた」とか、




新聞小説にどっぷり_c0019055_21113350.jpg 櫛の意匠のくだりでは、「青い葛に蔦紅葉が絡まる姿態は妖艶で、下絵には意図した女の情念が出ていた・・・」といった具合に、乙川優三郎の筆も、一段と冴え、彼の流麗な文章によって繰り広げられる世界に、私も、どっぷり首まで浸かっているのである。


     
      ↑ サトザクラ



 「喜知次」という小説で、初めて乙川優三郎の作品に触れたとき、山本周五郎や、藤沢周平の作品に出会ったときと同じときめきを覚えて、以来、彼のファンになったのだが(彼自身、好きな作家に、山本周五郎の名を上げているし、「五年の梅」という作品で、山本周五郎賞も受賞している)、毎日、読むのが楽しみで、まだ、連載が始まって2ヶ月あまりにもかかわらず、もう、今から、単行本化されたら、絶対、買おうと決めている。


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                            ↑ カラー



 さらに、乙川優三郎の小説に花を添え、盛りたてている、この連載のもうひとつの大きな魅力が、現役最長老の挿絵画家・中一弥さんによる、墨の濃淡を生かした情感溢れる挿絵なのである。



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直木三十五の挿絵でデビューして以来80年、山本周五郎や、池波正太郎などの作品を手がけてきた中さんが、乙川優三郎と組むのは、これが2度目とのことだが、「98歳で、また一緒に仕事が出来て、画家冥利に尽きる」とのこと。




 細やかな筆遣いで描き出される、自然界の花や草木、江戸時代の下町の風景、櫛や印籠などの小物類等々も素敵だし、和服姿の女蒔絵師・理野さんの、切れ長の目と端正なうりざね顔には、人を強く惹きつけるものがあるが、「女性は、肩の線と髪型が難しい」とか。


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←   リンゴの花
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                                           ↑ ヒメリンゴの花

 新聞小説というのは、忙しかったりすると、つい、間が抜けてしまいがちなので、2~3日分をまとめて読んだりもしているが、蒔絵という、未知の世界の手法など、全てが新鮮だし、文章表現にも、普段使わないような言葉が出てくるのも、いい勉強になっている。





新聞小説にどっぷり_c0019055_21584860.jpg 勉強といえば、私が、まだ、中学生だった遠い昔のこと。新聞小説を読んでいた私に、母が、文中の“櫛比”という字が読めるか?と、たずねたので、読めないと答えると、母は、この字は、“しっぴ”と読み、櫛の歯のように、ほとんど隙間なく、家や商店が並んでいることを言うのだと、教えてくれたのである。



       ↑ エニシダ

 学校で習ったことは、すぐ忘れてしまっても、不思議なことに、このときのシーンと、“櫛比(しっぴ)”という言葉だけは、いまだに、はっきりと覚えているが、家庭での教育というのは、そういうもので、遊びや、一寸した親子の会話を通して、なされるものなのではなかろうか?



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 いずれにしても、このところ、新聞小説を読むことで、新しい世界に触れることができ、心豊かな思いで、毎日を過ごしているので、新聞のページをめくるのが、楽しく、挿絵共々、この先の展開に胸をわくわくさせているのである。


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 カットに使った写真は、アンジェで撮ったものだが、濃いピンクの、ぼってりと甘美な感じのサトザクラ、その木の下を流れる小川沿いに咲くカラー。同じホワイト系のユキヤナギや、コデマリ、プリムラ、ヒメウツギ、リンゴにヒメリンゴの花、そして、黄色いエニシダに、ジャーマンアイリス等々、さまざまな花々が、咲き乱れ、芝生の広場では、元気に走り回る子供たちや、家族連れなど、憩いのひと時を過ごす大勢の人々の姿が見られた。



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                          国領神社の千年藤



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by pooch_ai | 2009-05-06 22:28
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